どうも、武信です。(No732)
前回の記事が以下です。
2020年教育改革への僕の本「「亡国のメガロポリス」の引用・まとめ」PART1
最初に、短文書評を載せておきます。僕はこの本をかなり高く評価しています。
「4点。三橋貴明氏の本を2年ぶりぐらい?に読んでみたが、離れていたのを失敗だったと思うほど濃い本。構想とはこういう本のことを言う。大前研一氏を抜いたと思う。政治家、経営者は必読。一般人にも良い。議論の叩き台として広く読まれて欲しい良書。」以上、ここまで。
ちなみに5点満点であり、5点をつけることはほぼないため、4.5点が僕の短文書評では最高点に実質上なるわけですが、この本に4.5点をつけてもいいかなと思うぐらいの出来栄えでした。
ですが、政策の善し悪しが完全に理解できているか分からなかったので、4点にしました。
かなりのマクロ経済学の分かりやすい本としては良書でして、さらに三橋氏の提言力、構想力が凄いと思いました。
この本の一部を引用・まとめします。(要約に近いですが、ぼくの概念では多少違います)
目次。
1 少子化の原因。
2 人口減少が経済成長しない論は嘘。
3 日本が経済成長しない理由。
4 日本の人口現象の整理。
5 移民受入の問題点&安倍政権の評価。
6 地方の失業率低下&実質賃金の話&労働集約的になっている話。
7 東京とシンガポール比較&東京都と島根県比較
8 三橋氏の提案。
9 三橋氏の提案2。
目次はここまで全部、要約しましたが、これだと本を全部、引用・まとめしてしまうので、ここから6までを紹介したいと思います。
全文では2万2000文字になっていますがこのうち、14000文字ぐらいを紹介します。
1(PART1、PART2)と2(PART1、PART2)と3と4に分けます。
3と4は僕の意見や他の本の引用・まとめが入っています。
3 日本が経済成長しない理由。
日本が経済成長しない理由は、デフレーションが主因です。
デフレーションとは供給能力(モノやサービスを生産する力)に対し、総需要(=GDP)が不足する経済現象です。
生産はできるにも関わらず、買い手がいない、カネの払い手がいない、顧客がいない、仕事がありません。
モノやサービスが売れないため、物価が下がり、所得が縮小していきます。
経済成長のためにはデフレの逆、つまり、総需要が供給能力を上回るインフレギャップの環境が必要です。
インフレギャップ下の生産性向上こそが、継続的な経済成長もたらします。
高度経済成長時代は典型例です。詳しくはP94~。
高度経済成長期は深刻な人手不足(移民や外国人労働者を使う環境じゃありませんでした&完全雇用状態であり、働ける日本人は全員働いていた)の中で、4つの投資(設備投資、人材投資、公共投資、技術投資)をひたすらして、生産性を爆上げして、膨大な需要に対応したのです。
そして、所得も伸び(実質賃金の上昇)、豊かになる循環になり、経済成長したのです。(ちなみに高度経済成長期の輸出依存度は10%以下で、現在(約14%)より低く、海外に活路を見出さなくても経済成長できた、つまり内需の潜在性がでかかったともいえます)
対して、欧州諸国(イギリス、フランス、ドイツなど)は人手不足は日本の高度経済成長期と同じだったのですが、外国人労働者活用で人手不足を埋める環境があり、日本ほど投資しなかったのです。
よって、欧州諸国は日本の高度経済成長期の半分未満の成長率(それでも高いが)に収まりました。
4 日本の人口現象の整理。
ここで、日本の人口現象を整理しておきます。
日本の総人口は2010年、2011年前後にピークを打ち、その後は減っていますが、横ばいです。
理由は高齢化でお年寄りが長生きしているためです。(総人口の話ですね)
とはいえ、生産年齢人口は横ばいでは済まず、総人口に占める「生産年齢人比率」は低下していっています。
日本の生産年齢人口比率はバブル期に70%弱とピークを打った後、次第に下がり、真近では2017年に60%を切りました。
日本の人口現象は「日本は人口が減って衰退する!」ではなく、総人口に占める生産年齢人口の割合が減っていく、つまり総人口という「需要」に対し、生産年齢人口という「供給能力」が不足し始める問題なのです。
それにも関わらず、「日本では人口が減るからデフレ論」がまかり通り、「デフレの正体」というインチキ本も売れていました。
詳しくはP106~。(繰り返しますが「日本人の勝算」という本によると「生産年齢人口が増えるのはデフレ要因、減るのはインフレ要因」です。インチキ本とは逆ですね。さらに「子どもが増えるのはインフレ要因、減るのはデフレ要因」とあります。これはインチキ本が正しいです)
日本銀行のレポートでも三橋氏が解釈した内容は、「日本国民が神のごとき洞察力をもって、将来のインフレを予測し、「将来の生産が減るから、今、消費や投資をやめておこう」となっています。
総需要が高齢化で維持される状況で、労働人口なりが相対的に減っていけば発生しうる経済現象はデフレではなく、インフレであると想像がつくはずだと三橋氏はいいます。(これについても人口が減ると物価にどう影響を与えるかは複雑だと、「日本人の勝算」という本に書かれています。影響の出方次第で、インフレ要因にもデフレ要因にもなります。例えば「人口が減ると総需要が減るのでデフレ要因になる」と考えることもできれば、逆に三橋氏の指摘のように「人手が減り、給料が上がればインフレ要因になる」とも考えられます)
そして、労働人口や生産年齢人口の減少がデフレの原因となれば、困った話になります。
少子高齢化が継続しており、日本の生産年齢人口が減少していくということは少なくとも15年間は確定しており、今、子供がたくさん生まれたとしても、15年間は生産年齢人口に組み入れられません。
ということは、日本は今後最低15年間、デフレーションから脱することができなくなり、生産能力が江戸時代の水準に退化してしまいかねないのです。(さらに過去、20年間、デフレに苦しめられてきたというおまけつきです)
デフレが引き起こす問題は多種多様ですが、深刻な問題の1つが「未来の供給能力が毀損していく」ことです。
総需要が供給能力を下回るデフレ国では、モノやサービスを生産することはできても、売れないので、結果的に、設備が廃棄され、工場が閉鎖され、人材が放逐されます。
結果的に、過去の投資により蓄積されたモノやサービスを生産する力、虎の子の経済力が破壊されていきます。
デフレを放置すれば、日本は「自国の企業や人材、技術では高層ビルを建てられない、大きな橋を架けられない」国へと落ちぶれていくことになるのです。
まさに発展途上国です。
というわけで、日本の経済力を維持、拡大するには、国民経済がインフレギャップと化し、さらにインフレギャップを生産性向上で埋める努力をして、高度経済成長期と同じ経済成長の黄金循環に入れるといえます。
繰り返しますが、デフレと人口は関係ありません。
日本以上のハイペースで人口が減っているジョージややラトビアやリトアニアがデフレに陥っていないのが証拠です。
ジョージアなど人口減少国がデフレに陥っていない理由はデフレを引き起こすイベントを経験していないからです。
それはバブル崩壊です。詳しくはP110~。
日本のデフレはバブル崩壊後に始まったのではなく、橋本政権が1997年に行った緊縮財政(消費税増税、公共投資削減など)がトリガーになったのです。
デフレ下で企業は利益を稼ぎにくくなり、その結果、国民の所得水準が低下し(実質賃金の低下。非正規雇用も増加)、婚姻率も低下し(有配偶率の低下)、少子化も進んだと前に述べました。
デフレ下で少子化が進行するのは日本だけでなく、1929年から始まったアメリカの大恐慌下でも、出生率が一気に26%も低下しています。
現時点では、極端なデフレに苦しむギリシャでもやはり結婚と出産は減っています。
少子化が進行すると、生産年齢人口が低下します。
少子高齢化が日本では終わっていないので、今後も人手不足が深刻化し、結果、実質賃金は中期的には上昇していきます。
労働者側の「売り手市場」になっていき、雇用は安定に向かい、実質賃金が継続的に上昇していけば結婚が増え、結婚が増えると有配偶出生率が改善し、子供が増え、少子化は解消に向かいます。
すなわち、デフレ期に実質賃金が下落し、雇用が不安定化することで少子化がもたらされることは「将来的な人手不足、雇用の安定化」へとつながるスタビライザー(安定化装置)の役目を果たすのです。
上記の安定化装置を破壊してしまうのが、グローバリスムであり、移民受入です。詳しくはP119~。
2に続きます。
ではこの辺で。(3907文字)
このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。
あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。