日本式経営(人事含む)を敢えて評価するならば。。。

  • 2021年11月7日
  • 2021年11月14日
  • 経営学
  • 17回

どうも、武信です。(No1072)

 

日本式経営は今、岐路に立たされ、見直しを迫られています。

 

2020年度のアメリカの平均年収は700万円近くになり、日本ではここ30年ぐらいの間、給与水準が上がらず、平均年収も400万円程度と、失われた30年状態です。

 

この戦犯の一つとして、日本式経営もやり玉に挙げられています。

 

しかし、完全に日本式経営が悪者なのでしょうか?

 

今回は日本式経営にも敢えて良い面があるとしたら、どういう点か?を考察してみます。

 

他の論点についても考察しています。

 

興味がある人は続きをお読み下さい。

 

 

1 日本式経営の特徴である年功序列と終身雇用の良い点。

 

日本式経営の特徴といえば、年功序列・終身雇用です。

 

このシステムは日本の高度経済成長期の上り調子の時代には非常にマッチしていました。

 

大量に良いものを売ればそこそこ売れる時代だったので、勤勉で忠実な兵隊を企業は求めており、企業への忠誠心を上げる仕組みとして、年功序列・終身雇用は格好の的だったのです。

 

しかし、時代は変わり、本当に良いモノしか売れなくなり、世界的な競争も高まったので、日本企業の優位性は完全に崩れました。

 

中国企業はIT鎖国をして、社会主義独裁で、独自の成長路線をとり、アメリカは金融とICT、イノベーション的製品を好むお国柄と移民などによる人口の持続的増加などで飛躍的に成長しました。

 

日本は少子高齢化と人口減少と、イノベーション的製品を好まないお国柄、政府と労働市場などの硬直化などにより、成長から完全に取り残されました。

 

しかし、精神面に特に焦点を当てると、年功序列・終身雇用は良い制度だったのです。

 

アメリカ型社会は超競争社会で、解雇規制もなく、すぐに首にされる一方、企業によるメンタルヘルス制度は整っています。

 

北欧やヨーロッパは社会福祉が整っています。

 

日本人は災害大国のゆえか、不安遺伝子を持っている人がかなり多く、エニアグラムでもタイプ6の安全主義の人が多いことからも、すぐに首にならないシステムは心の平穏の拠り所でした。

 

年を取れば取るほどセロトニンが減ってうつ病になりやすいので、年功序列による安心感は大事です。

 

また、年を取れば取るほど医療や教育に金がかかることからも、年功序列は適していました。

 

加えて、今の40代、50代社員は報酬の割に働きと稼ぎが少ないと言われますが、従業員の多くは20代のうちに安い給料で長時間残業をするなどして企業に報いてきたわけでして、後で見返りが来ないことのほうがおかしいのです。

 

高齢になった社員をリストラするということは「企業による借金の踏み倒し」なのです。

 

また、従業員が企業にお金を貸していることで、その企業が潰れれば課したお金が返ってこないことから、社員は企業に忠誠を誓うようになります。

 

企業と一蓮托生と考えるので、企業のブランドイメージを守り通そうとするでしょう。

 

しかし、企業と一蓮托生ということは、社内内部告発が少なくなり、不祥事がもみ消される確率は上がるでしょう。(和を乱す者は処刑されるのです)

 

アメリカは転職が大前提の社会であり、忠誠心は少ないでしょうが、訴訟社会なので、何か問題があったら、法で解決します。

 

このような社会では、パワハラの減少につながったり、社内内部告発の減少を阻止したり(企業と一連託生じゃない)、企業での社員の情報漏えいなどがあれば法的に訴えることも可能でしょう。

 

日本企業の不祥事が続々と発表されていることは、過去、どれだけ企業と一連託生の村社会だったのかが今頃、明るみになった証拠ともいえます。

 

精神科医の和田秀樹氏は「終身雇用がなくなったから、会社への忠誠心が減り、ブランドイメージを傷つける行為を気にしなくなった」と言っていますが、逆でしょう。

 

かつての日本製品のクオリティの高さも、年功序列と終身雇用の考え方が、自社製品の高品質化を支えてきたとも和田秀樹氏は言っていますが、会社への忠誠心は諸刃の剣であり、企業のブランドイメージを守り抜くために、不祥事を隠ぺいし尽くす動きもするのです。

 

確かに、超競争社会のアメリカのメンタルヘルス問題は問題視されていそうですし、日本ではアメリカの経営方式の真似をしても、メンタルヘルスについては真似しないのは問題といえそうです。

 

2017年の精神疾患の総患者数が419万3000人であり、適応障害(深田恭子さんが罹ったことで有名)の患者は和田秀樹氏の見立てによると、そのうちの10%だとすれば、日本全国で40万人もいるので、もっと問題視すべき事象でしょう。

 

2 消費者が様々なことを左右し、決める。

 

ところで、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代には、労働分配率が高く、経営者の給料を低く抑えて、代わりに社員の給料が高かったのです。

 

さらに、高い労働分配率とともに消費者の要求水準も高かったことが、企業が良いモノを作る動機づけとなりました。

 

技術力の高い国が良いモノを作るというより、「消費者の要求水準が製品・サービスの質を決める」ということです。

 

中国や韓国が伸びてきたのも、技術よりも消費者の要求水準が上がったことですし、アメリカでもそうです。

 

アメリカ人は大雑把といわれますが、スティーブジョブズの登場により、ICT製品はデザイン面ももちろん、使い勝手もかなり斬新になりました。(iPhone、iPadなど多数)

 

さて、日本のTV局の番組がイマイチだとしたら、それは高齢者と専業主婦などが主な読者層なので、その人達にウケるように作られているからです。(10代、20代の若者の半分はTVを見ないので、彼ら向けに番組を積極的に作ろうとは思えません)

 

結局「消費者・国民が様々なことを左右する・決める」のであれば、イノベーション的製品を好まない日本では、アメリカではバカ売れのアップルウォッチやスマートスピーカーなどの最先端製品は売れないですし、市場が育たないということにもつながるのです。

 

高齢者ばかりが多く、そういう市場であれば、TV局や企業も、高齢者向けにモノやサービスを作ります。

 

そうやって、新しい画期的な製品の市場は生まれにくくなり、高齢者は金を貯め込み、消費の循環が途切れ、停滞し続けるのでしょう。

 

高齢者になればなるほど、消費を活発にしなくなりますから(特に、新しいモノ)、その高齢者が多数を占める日本が停滞するのは当然といえます。

 

和田秀樹氏は「高齢者や生活保護者などの消費者を大事にすべき!」と主張していますが、金を貯め込んでいます。

 

「高齢者などの消費者を大事にすべき!」という主張の根拠は、モノ余り時代(生産>消費)においては、消費者が第一であり、生産者はそこまで必要とされないからです。(「生産性を上げろ!」という主張もナンセンスだといいます)

 

しかし、高齢者は基本的にあまり消費しないのです。(さらに、最先端のモノやサービスを使いたがりません)

 

以下の記事では、都道府県ごとに、貯蓄額ランキングが載っています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c712765480f46ba23ffb257b0e13b8af6839def

都道府県「貯蓄額」ランキング…1位と47位に「1,808万円」もの差

 

世帯主年齢別平均貯蓄額も載っているので記事から抜粋します。

 

【世帯主年齢別「平均貯蓄額」】

20代 376万円(年間収入564万円

30代 760万円(年間収入675万円)

40代 1,081万円(年間収入786万円)

50代 1,703万円(年間収入869万円)

60代 2,384万円(年間収入592万円)

70代 2,259万円(年間収入441万円)

以上、ここまで。

 

やはり、高年齢になればなるほど、貯め込んでいます。

 

あと、海外に売れるモノもだんだんと日本は作れなくなる恐れさえあります。(日本の最後の砦である自動車業界も、電気自動車時代になったら、どうなるのでしょう)

 

韓国化(人口が少なくなり、内需で回せなくなり、輸出をしないと生き残れない。英語、ICTなど必須)して、始めて日本が外需を取りにいってももう手遅れです。

Netflixで有名なイカゲームも韓国製であり、BTSというグループも韓国人です。

 

韓国は外需、つまり世界を最初からマーケットとして意識したエンタメ戦略をとっているのに対し、日本は未だに内需優先で、世界市場を意識していません。

 

もちろん、日本のアニメは海外受けがよく、そのまま続ければいいでしょうが、その他のエンタメ路線については最初から海外市場を意識してもいいのではないでしょうか?

 

加えて、驚くべきことに、韓国の一人当たりGDPと平均賃金が、日本をついに追い抜いたとのこと。

 

韓国に追い抜かれたのは、危機感の違いもあるでしょう。

 

内需が小さく、世界を相手にして外需をもぎ取らなければならないという危機感です。

 

そのため、エンタメでは最初から世界市場をマーケットとし、英語とICTも重要視しています。

 

翻って、日本は内需が大きいので、エンタメでは世界市場はそこまで気にしていなく、英語を話せる人も少なく、ICT(デジタル化)も今頃、騒がれています。

 

こういう致命的な危機感の欠如、動きの遅れが、今になって効いて、韓国に追い抜かれたのだと思います。

 

また、普通は「第一次産業→第二次産業→第三次産業の順に発展すれば平均年収が増える」のですが、日本は第二次産業(例えば自動車産業)のほうが第三次産業(サービス業)よりも平均年収が高い、異常な現象が起きています。

 

理由として、アメリカのサービス業ではチップ制がありますが、日本では過剰なおもてなしサービス(感情労働)が行われ、非効率だからとも言われています。

 

その結果として、サービス産業労働者に適応障害やうつ病患者が増えている可能性もあります。

 

3 日本式経営の唯一の利点はメンタル面の安定ぐらいだったが。。。

 

話がかなり逸れましたが、日本式経営を敢えて評価するとしたら、メンタル面の安定ぐらいです。

 

確かに、金銭的問題がちらつくと、IQが下がるので、金銭的問題だけは避けたいところです。

 

しかし、年功序列と終身雇用の維持によって、企業が置いていかれ、沈没するとしたら、金銭的問題に直面します。

 

金銭的問題が表出化したら、IQが下がり、メンタルもやられるでしょう。

 

メンタルの安定が取り柄だった年功序列と終身雇用の良さが消えるのです。

 

あと、欧米のように割り切った経営システムじゃなかったので、家族経営的意味合いがあり、誰かが面倒を見てくれる、人間関係が良くも悪くも濃密なシステムだったとも言えます。

 

しかし、今は、日本式経営が否定され、飲みニケーションも若者には不評ですし、誰かが面倒を見てくれるというシステムは小さくなりました。

 

「政府や企業が守ってくれる!」というのが過去の日本社会でしたが、今は縮小しています。(菅元首相は、自助・共助・公助を掲げましたからね)

 

その点、ベーシックインカムは金銭的不安の解消、それによるメンタル面の安定には寄与すると思いますが、膨大な財源が必要であり、さらに抵抗勢力(既存の年金生活者など)も多く、実現は厳しいと思います。

 

適応障害について詳しく書かれている本が、和田秀樹氏による「適応障害の真実」という本です。

 

興味がある方は一読をぜひどうぞ!

 

短文書評は以下です。

 

「適応障害の真実」3点。和田秀樹氏の本。適応障害が増えている時代背景を日本経済などと絡めながら、分析もしている。適応障害やうつ病を患う人は真面目な人。適当な人ほど、患わない。医学界の悪も暴いている。ディオバンの効果に関するデータを改ざんした大学が、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5つ。2018年の東京医科大学の不正入学。2010年から2014年にかけての腹腔鏡手術のミスの群馬大学。私立よりも国立大学のほうが優秀だ!という偏見は取り除かなければならないとのこと。一読しておきたい」以上、ここまで。

 

「適応障害の真実」

 

ではこの辺で。(4783文字)

 

このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。

 

あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。

 

参考・引用文献。

 

「適応障害の真実」

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