どうも、武信です。(No326)
「フィクサーによる日本教育改革本」も教育の全体図・俯瞰図でしたが、経営学でも俯瞰図を作ろうという野心で作ったのが本書です。
「フィクサーによる日本の教育改革本」も教育業界に影響を与えていると思われますが、この俯瞰経営学も多少は影響を与えているかもしれません。
作り始めたのは3年くらい前ですし、まだ未完成ですが、出版社らにパクられまくり、新規性がなくなったので、無料で公開します。
「俯瞰経営学2」のPART5です。
本編はここからです。
前置き編が終わって、ようやく本編に入ります。
ここからが僕の経営学の俯瞰全体地図です。
6 経営戦略(外部環境分析 将来予測シュミレーション)
ここからは、経営戦略の中でも少し違う概念です。
将来予測シュミレーションについて書きます。
将来予測シュミレーションとは、未来予測のことです。
未来がどうなるか?ある程度の予測をして動くのと、動かないのとでは、経営に雲泥の差が出てきます。
未来予測の本として、「人工知能と経済の未来」という本はお勧めです。
人工知能は世界の未来を変える鍵となりそうです。
第4次産業革命とまで言われています。
このような未来予測図に沿って、経営戦略も練らないといけません。
不確実性をマネジメントするには、シナリオプランニングという手法もあります。
ある決定を下したときに想定されるリスクと、期待されるリターンを明らかにする戦略論の手法です。
不確定要素を洗い出し、それらがアップサイド(楽観的)に振れた場合と、ダウンサイド(悲観的)に振れた場合に、それぞれどのような結果がもたらされるかシュミレーションします。
詳しくは、「入社10年分の思考スキルが3時間で学べる」の本のP152~156や、その他の市販の本を読んでください。
「新富裕層の研究」という本にも、未来予測図が書かれています。
GDPは個人消費、設備投資、政府支出、貿易収支などに分かれますが、そのうちの設備投資をすることにより、工場や店舗という形で日本に残り、それらがさらに富を生み出す循環になります。
ちなみに、日本の個人消費は約6割で、金額にして300兆円ほどであり、設備投資は100兆円強です。
米国の個人消費は7割、中国は4割で、中国の設備投資は4割と高いです。
そして、著者によると、設備投資が今後の日本では必要性が薄れるかもしれないと予測しています。
民泊が浸透すれば、ホテルや旅館インフラへの投資が減ります。
荷物の配送が個人に解放されれば(Amazonが検討中)、運送事業者の設備投資が減ります。
アプリを使って、個人に荷物の配送を依頼するシステムだそうです。
自動運転が普及したら、新しい駐車場などのインフラ投資が不要になります。
Uberなどのタクシー配車サービスにより、自動車が売れなくなるかもしれません。
AmazonのAWSなどのクラウドサービスにより、サーバーへの投資も減るかもしれません。
社会の空き領域、つまり利用されていなかった資源を効率よく使うことにより、新しい設備投資への意欲が減退するのです。
アメリカでも、設備投資への減少により資本が余り、それが低金利を引き起こしているのでは?と著者は考えているようです。
また、モノの値段は経済のグローバル化やIT化により、下落傾向になりましたが、サービス業にも余波が来そうだと著者は言います。
UberやAirbnbなどの生産者と消費者の区別がつかない人たちが市場に参入したら、サービス業の人たちの賃金も下落する恐れがあります。
今のところ(1990年代、2000年代)、サービス業の全要素生産性(TFP)はマイナスになっていますが、油断はできません。
過剰雇用がシェアリング・エコノミーにより、改善できることが分かれば、リストラが進むと思われるからです。
そして、少ない人手で、売上高が上げられた場合、生産性は上がります。
サービス業の生産性が上がるのはいいことですが、リストラされた人材はどこに行けばいいのでしょうか?
サービス業だけでなく、人口知能に取って代わられた職業全般について言えます。
これへの答えは、米国の例ですが、イノベーションの仕事(例えば先進的ネット企業のエンジニアなど)が1件増えると、その地域のサービス業で、5件の雇用が生まれるということになります。
つまり、IT関連だけが増えるのではなく、ヨガのインストラクターやカフェの定員などの対面型サービス業が増えるのです。
この事実は、ITによって効率化が極度に進むと、人は対面型のコミュニケーションを求めるようになる可能性が浮上したことを物語っています。
これが事実なら、対面型サービス業の増加により、経済が再び活性化するかもしれません。
しかし、自家用車が本当に必要なのか?今後、売れ続けるのか?という将来予測については疑問符が出てきています。
「数字で話せ」という本からの引用・まとめです。P56~63。
欧州や米国で、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験が始まっているからです。
Uberだけがライバルじゃなかったのです。
MaaSとは、自家用車を個人で保有せず、電車・バス・タクシーなどの交通機関をシームレスに利用するサービスのことをいい、具体的には「モバイルアプリで経路検索し、そのまま目的地までの交通機関を予約・決済する仕組み」です。
月額で利用し放題のサブスクリプション・モデルも用意され、毎月一定金額を払えば、電車・バス・タクシー・レンタカーが乗り放題になります。
ここで車を保有するコストについて試算してみましょう。
ガソリン代は「1リットルで20キロ走るハイブリッド車」なら、50キロほど運転してもガソリンは3リットルも使わず、仮に「1リットルが150円」と仮定しても、500円ぐらいになります。
駐車場代は場所によって差がありますが、都内の一等地なら1時間当たり500円以上、何時間も駐車すると数千円になりますが、パーキングつきの施設であればタダですし、週末に郊外にドライブに行くのなら、かからない場合も多いでしょう。
高速代も都度発生するコストであり、こちらも場所次第であり、複数人で車に乗るならガソリン代を含めても、電車賃より安くなることもあるでしょう。
つまり、車の都度利用のコストは、数百円から数千円程度となりますが、問題は車の保有コストです。
車の減価償却は普通自動車でも6年、軽自動車で4年であり、買った車は4~6年で価値がゼロになります。(あくまで税法上)
計算を簡単にするため、この償却期間を5年とすると、仮に200万円の新車を購入した場合、毎年40万円(200万円÷5年)ずつ、車の価値は下がっていき、毎月だと3万円ちょっと、つまり、車を保有するだけで3万円が毎月消えていきます。
その他、税金、保険、月極めの駐車場代など、ざっと年間20万円ぐらいかかり、毎月2万円弱かかります。
トータルで計算すると年間60万円ぐらいであり、月当たりで5万円のコストになり、1日当たりの保有コストを計算すると、約1600~1700円になり、この金額が車に乗る日も乗らない日もチャリンチャリンと支払われます。
毎日乗る人なら、日々1600~1700円の費用+ガソリン代がかかります。
週に2回乗る人なら、1回当たり(1日当たり)の利用料は5000~6000円ほどです。
例えば、週末に近所のスーパーに買い物に行くのに1回5000円払っている計算であり、さすがに高いです。
自動車を保有するコストが年間60万円ほどだといいましたが、日本国内で射個人が保有する自動車は約6000万台であり、1台ごとに毎年60万円の保有費用が発生していると仮定すると、トータル費用は36兆円です。
ちなみに「万☓万=億」と覚えておくと、6000万台☓60万円の計算が簡単にできます。(6000万☓60万=360000億=36兆)
携帯電話業界は10兆円、スーパー・百貨店が19.5兆円、コンビニが11兆円、鉄道業界全体で6兆円、タクシー業界は1.5兆円、バス業界は1兆円です。
この自動車業界36兆円の一部がMaaSのようなサービスに置き換わったら、かなりの衝撃でしょう。
MaaSの試算をしてみます。
仮に、月3万円で電車・バス・タクシーなどが使い放題になり、それを日本人の3分の1である4000万人が利用できるようになったら、MaaS業界は14兆円産業になり、自家用車に払う36兆円の40%が新たな移動ビジネスに移ったということになります。
交通渋滞やパーキングのスペースや幹線道路の有効活用にもつながり、公共交通機関の利用が進むと社会的な利益(地球環境やサスティナビリティ)が得られ、多くの世代に受け入れられやすいでしょう。
MaaS実現に向けては、ドライバーの確保、自動運転の進化、新車販売で収益を稼いでいる自動車業界の事業転換対策など、超えるべきハードルが多いですが、シェアリングエコノミーに対する意識は高まっています。
自動車業界といえども、未来は盤石ではないのです。
将来予測としては、経済予測も重要です。
経済予測を誤ったために大きな損失を被ったり、利益を逃したりします。
シャープは、2004年と2006年の亀山工場稼働は、仕方ないと言えるでしょう。
しかし、米国の住宅バブルがはじけようとしていた2006年の工場稼働は、判断ミスでしょう。
さらに、2011年3月のエコポイント終了までと同年の7月のアナログ放送終了までには、「地デジ特需」は終わるのは目に見えていたのにもかかわらず、2009年に4200億円をかけて、堺工場を稼働したのはシャープの致命傷でした。
シャープの言い分は、日本での需要は萎むだろうが世界的には拡大するという目論見のようでしたが、失敗に終わりました。
パナソニックも、2006年と2007年の工場稼働はまぁ良しとして、2009年と2010年の工場稼働(1500億円かけた尼崎第3工場と2350億円かけた姫路工場)は明らかに失敗でした。
次に、日本の大手商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)の2015年度の決算では、エネルギー資源価格の大幅な下落により、減損損失が1兆2000億円にまで膨らみ、5社合計の黒字は1443億円(前年度は1兆400億円の黒字)まで減少しました。
原油価格は2014年後半から下落を始め、1バレル100ドル以上していたのが、2015年1月に50ドルを下回り、2016年2月には一時的に30ドルを割り込みました。
2013年初頭に1トン150ドルを超えていた鉄鉱石価格も、2014年11月には70ドルを割り込み、2015年11月には50ドルを下回るようになりました。
銅価格も大幅に下落し、三菱商事と三井物産の赤字に大きく影響しました。
石油元売り大手(JXホールディングス、コスモエネルギーホールディングス、出光興産)も赤字に陥りました。
国際機関IMFやシンクタンクの予測は当てになりません。
なぜなら、彼らの予測は過去のトレンドに沿って予測しているからです。
トレンドの転換までは見通せないのです。
日本だけでなく、石油メジャー、資源メジャー、米自動車大手なども、需要と供給の予測に失敗し、痛い目に遭っています。
原油価格の下落では、ロイヤル・ダッチ・シェル、シェプロン、エクソンモービルの大幅減益、資源価格の下落では、リオ・ティントが赤字転落、アングロ・アメリカンが大幅赤字、BHPビリトンが巨額損失計上、経済の流れの見誤りでは、GM、フォード、クライスラーが経営危機に陥っています。
日本の証券会社やシンクタンクも、経済や市場の予測をよく外します。
経営予測として、予測しやすい順に挙げると、経済のトレンド>為替相場、原油相場、資源相場>株式相場となります。
株式相場の予測は、かなり難しいのです。
過去20年の相場の歴史で言うと、世界的なITバブルの崩壊、米国の住宅バブルの崩壊、世界的な金融危機、欧州の債務危機、資源バブルの崩壊、2016年の円高トレンドへの転換など、トレンドの転換をことごとく外しているのが金融機関やシンクタンクです。
経済予測で大事なのは、経済のトレンドの転換点をしっかりと見極めることです。
現状の経済トレンドがいつまで続くのか、経済トレンドの転換点がいつになるのかが分かれば、企業の経営や投資の効率が上がります。
これらを予測するためには、世界全体や各国での「モノの需要と供給のバランス」を考慮することになります。
具体的には、自動車、住宅、原油、天然ガス、鉄鋼、エチレンなどの動きを追うことです。
次に、各国の家計・企業の債務の推移と、世界全体で実体経済と金融経済のバランスに偏りが出ていないのか、という予測が大事です。
経済トレンドの予測のメリットは、景気後退に備えた経営(景気後退を予測した時点で、設備投資を控えたり、採用を抑えるなどで)と、経営上のチャンス(景気拡大を予測できれば、積極的に設備投資を拡大するなど)を逃さなくなることです。
経済予測の基本は、次の6つの景気判断を意識することです。
1 景気拡大が始まるという判断。
2 景気拡大が続いているという判断。
3 景気拡大が終わるという判断。
4 景気後退が始まるという判断。
5 景気後退が続いているという判断。
6 景気後退が終わるという判断。
詳しくは、中原圭介氏の著書「ビジネスで使える経済予測入門」を読んで学んでください。
彼の著書にもっと詳しく書いてありますので。
ではこの辺で。(5889文字)
このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。
あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。
参考・引用文献。
「人工知能と経済の未来」
「入社10年分の思考スキルが3時間で学べる」
「新富裕層の研究」
「数字で話せ」
「ビジネスで使える経済予測入門」